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2005.06.01

キングダム・オブ・ヘブン

キングダム・オブ・ヘブン
“Kingdom of Heaven” by Ridley Scott
2005年*USA etc.*スコープ・サイズ

TOHOシネマズ府中 スクリーン7にて

思っていたよりも悪くなかったというか、そもそも、リドリー・スコットの映画で、登場人物の複雑な心理描写なんて、期待するほうが無駄なわけだし。いや、『デュエリスト/決闘者』や『白い嵐』など、スコット作品でも数本は未見のものがあるので、もしかしたらそれが素晴らしい作品であるという可能性もあるわけですが(^^)。

何かの予告篇で、リドリー・スコットを“巨匠”と謳っているものがあって、そういう存在なのかと驚かされる。せいぜい僕のトボしい映画経験と知識からは、映像派の奇才というくらいにしか受け止められないのだが、いやあ、まだまだ学ばねばならないことは多いわけだ。大いに反省(うそ)。

スコットの映画では、僕は『誰かに見られてる』が好きですねー。スタイリッシュなひとは、ああいう、破綻しようのない小さな話を撮っているぶんには良いんだけど。

時代物としては、前回の『グラディエーター』が、どうにも志の低い作品で(主人公は最初から最後まで私怨で行動するのみ)うんざりさせられたので、今回はまったく期待していなかったわけです。『ベン・ハー』『スパルタカス』とは、とても同列には並べられない映画だったなあ、あれは。

今回も、前半は、フォーカスがあいまいで、父と子との出会いと別れを描きつくすわけでもなし、フランスからエルサレムへの道中(よく考えてみたら、たとえ途中で船旅をはさむとしても、あとは馬か徒歩でこの距離を移動するわけで)の距離感時間的経過も、特には伝わってこない。いくらなんでも、それが“描けない”わけではなく、そういうことに興味がないんだろうなあ。

しかし、その経過をある程度は描かないと、一介の鍛冶屋の青年が、最後にはたくさんの民の運命を左右できるような、そんな能力と魅力とを、どこでどうやって身につけたのかが、理解できないのだ。作品だけから判断すると(こちらが作中の時間経過を考慮してやらないと)、まるで、単に“有能な父の息子”だから彼もまた有能だ、という、まったく血統至上主義のようにも思えてしまう。それだと、作品の展開から考えて、ちょっと矛盾するのではないだろうか。

しかし、後半は、さすがに盛り上げる。(宗教を背景にした)戦いの意味とは、集団を率いる者の責任や資質とは、などなど、ここからいろいろと読み取る(読み取りたい)ひともいるだろう。エルサレム防御の部分だけならば、僕も、けっこう感動した。そこに行くまでが、ちょっと長いんだよなあ(笑)。

そのままの勢いでラストまで行くので、観ているうちはそれほど疑問にも思わなかったけれど、ラストの場面は、よく考えると変かもしれない。あの場所で、彼は周囲の者たちから平然と受け容れられるだろうか???

キャストは、うーん、オーランド・ブルームって、顔がきれい過ぎて(こういうひとにヒゲは似合わない)、線も細いし、この役には合っているようなちょっと違うような。でも、たとえばヒュー・ジャックマンなんかが演じたら、もう、エルサレムに着く以前に、沿道のどこか小国の王くらいには簡単になっちゃいそうだし(^^)。だから、やっぱりブルームで良かったのかもしれない。

エヴァ・グリーン(Eva Green / Evergreen のシャレ(笑)か?)というひとを初めて観たのだが、メイクと衣装とでほとんど素顔は分からないけど、すっきりしたソフィー・マルソー(ただしデビュー当時)みたいな顔かな。ベルトルッチの『ドリーマーズ』って、どうだったんでしょう。とにかく、この役には合っている。

他は、ジェレミー・アイアンズもデヴィッド・シューリスも、さすがに好演。特にシューリスは、どんな状況下でもそれを客観視して行動する、ちょっと皮肉で陽気な(冷笑ではない)男のキャラクターを作り出していて、場面は少ないが印象的。ずっと仮面をつけたままのエルサレム王を演じているのは、なんとエドワード・ノートン。僕のリスニング力では、とても彼の声を聞き分けることは出来ないけれど、英語が分かれば、彼だと分かるものなのかなあ。メイクをしているので、画面からは、まず彼だとは分からないと思うのだが。

(珍しく)結論。
『グラディエーター』を100とすると、この映画は5000くらい。だからと言って、別に、映画史に残るような素晴らしい映画、というわけではない。しかし、メインの戦闘シーンなどでは、かなりの大作映画ふうな作りかたを堪能できる。デヴィッド・リーンやウィリアム・ワイラーがこのストーリーを撮ったとすれば、とさえ考えなければ、ひとによっては幸福な時間を過ごせるかもしれない。お疲れ。

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