岸辺のふたり
『岸辺のふたり』
“Father and Daughter” by Michael Dudok de Wit
2000年*UK/オランダ合作*ヴィスタ・サイズ下高井戸シネマにて
8分の短篇。なるほど、ものすごい(^^)。
いろんなものを削ぎ落としたシンプルな画なのだが、それなのに風・波・光・影という簡単には描写しにくいものが簡潔に表現される。中でも、薄く積もった雪(降っている状態ではない)の画に驚嘆。わずかな線で、きちんと伝えられるもんだなあ。
うつろいやすい(それが魅力でもある)自然の諸相という描写しにくいものを、シンプルだが確実に伝えること。それは、やはりうつろいやすい(否定的な意味ばかりではなく)“ひとの生と死”のきらめきを、簡潔だが的確にすくい取るこの作品のストーリーと、正しく重なり合う。ここには、技法と内容との幸福な合致がある。そこから、感動が生まれる。 …などという氷室の小賢しい考え(爆)は、この作品の前では虚しいただの言葉でしかない。
ストーリーは、大まかな流れはともかく、細部はどのようにでも解釈(想像)できるものなので、できれば“あらすじ紹介”の類は、観る前には読まないほうが良いかもしれない。いくつかのサイト&劇場プログラム(小冊子)に書いてあるあらすじが、もう、ちょっと違うんじゃないか、っていう感じなんだよね〜(^^;)。
まず、同監督の前作『掃除屋トム』“Tom Sweep”(1992年*3分)、『お坊さんと魚』“Le Moine et le poisson”(1994年*6分)が流れる。続いて、ノルシュテインの讃辞のあと本作が上映(1回目)され、終了後、(日本の)各界の支持者たちからの文字によるコメントが出て、最後に本篇がもう一度(2回目)繰り返される。総上映時間は30分弱。この上映形態は、たぶんロードショウ時に決められたものを、2番館以下に下りてきたときも踏襲しているのだろう。しかし、チラシの隅に小さく書いてはあるが、そんなものを読まないひとには、いきなり同じ作品がもう一回続けて上映されたら当惑するだろうなあ。
その点、下高井戸シネマは良心的な劇場なので(行きやすい場所にあるのにほとんど行かないことを、たまに行くと申し訳なく思ってしまう、それくらいきちんとしている(^^))、ちゃんと上映前にアナウンスがあったのだ。
しかし、僕はたまたまこの作品を良いものだと感じたから良いようなものの、正直言って、こういう(配給会社が決めたのであろう)奇妙な上映形態&映画本篇と関係のない者のコメント(それがたとえユーリ・ノルシュテインであったとしても)を観客に押しつけるのは、或る種の強要、ルール違反に近いんじゃないのかなあ。同じ作品を直後にもう一度観て、だから、感動が2倍(?)になるひともいれば、2倍引く(爆)ひともいると思うんだけど。
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コメント
遅くなってしまいましたがTBありがとうございました。
短い作品ですし、そのうえ台詞もないのですが素敵な作品でしたね。
僕も好きです。
投稿: 健太郎 | 2005.08.15 00:48